夜遅く電車に乗った。
田舎は窓の外に光が無い。電車の中が異様に明るく思えた。
私はボーっと席に座り、暫く周りを見ていた。
すると高校生らしきの男の子が乗って来た。
制服らしい服装で、となりのボックスに座った。
座るとすぐ携帯を取り出し、懸命に画面を見ている。
こんなに遅く帰る生徒がいるんだと思っていると、そこへ駈け込んで来た高校生がいた。
白い半そでの服を着ていた。
彼は何故か晴れやかな顔をしている。
どことなく嬉しそうで軽やかだ。
ボックス型の席に座ろうとして、制服の男の子に気が付いた。
友達なのか会釈をしながら何か話しかけた。
何を言ったかは聞こえない。
彼は手に提げていた高さ20cmも有りそうな箱を見せた。
どうもフィギュアが入っているらしい。透けて見える。
何のフィギュアなのだろうか。
制服の男の子はそれを見てニヤッと笑った。
女の子のフィギュアなのかな?
フィギュアを見せた高校生は、今度は大きなカバンから8cmぐらいの箱を取り出した。
そして暫く愛おしそうに箱を見ていた。
その後、がむしゃらに箱を破り中身を出した。
これもフィギュアだ。そして組み立て始めた。
何のフィギュアだろうか。
するともう一つカバンから出して来た。これも組み立てた。
それを見て思い出した。
アッ! ドラゴンボールだ!!!
暫く男の子は満足そうに眺めていた。
制服の男の子も一緒に眺めていた。
そして一言「飯代が二個分飛んだよ!」と言った。
それを聞いて私は笑ってしまった。
笑った顔が電車の窓に映ったらしく、それに気が付いた二人の高校生は、揃って私を見た。
高校生がこんな物にお金を掛けて楽しんでいる・・・とちょっと心配しになったが、お小遣いを節約してお腹をすかしてまで買ったのかと思ったら、やっぱり子供だなあ~と笑ってしまった。
そしてなんとなくほっとした気分になった。